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ヒートアイランドHeat island)は、都市部の気温がその周辺の非都市部に比べて異常な高温を示す現象。高温により自然環境が影響を受け、住民の生活や健康にも影響を及ぼすことから、近年問題視されている。対策を行わなければ、人口の集中がある場所では例外なく起こる現象で、都市の規模が大きいほどヒートアイランドの影響も大きい傾向にある。

ファイル:HeatIsland Kanto ytkm.png

特に冬場や夜間の気温上昇が著しく、東京では1920年代は年間70日程度観測されていた冬日がほぼ皆無になり、熱帯夜の日数は3倍以上に増加している。

概要 編集

「ヒートアイランド」という語は英語からきており、直訳すると「熱の島」であるが、これは気温分布を描いたとき,等温線が都市を中心にして閉じ,ちょうど都市部が周辺から浮いた島のように見えることに由来する。

この異常な温度上昇の主な原因は、端的に言えば都市化に伴う環境の変化だといえる。もともと土砂や植物で覆われていた場所に人間が定住すると、建物ができ、熱が放出されることになるが、都市ではこれが広範囲・高密度に現れ、気候の変化をもたらすのである。

また、近年高層化が進むビルが、の沿岸部に建てられ、の流れを遮り、それがさらに都市部の高温化に拍車をかけていることがわかって来ている。

ヒートアイランドの緩和策としては、緑地を増加させたり、不用な排熱を減らしたりといった対策が行われる。

ヒートアイランドの観測と評価 編集

ヒートアイランドの程度や状況を把握するのに最も広く用いられているのが、リモートセンシングである。センサーを搭載した人工衛星により都市とその周辺部の表面温度などを観測するもので、効果的にデータを得ることが可能である。

また、地上などでの気温の観測データは、都市化の前後を含めた長期のデータがあれば、都市部と郊外部の気温変化を比較することによって高精度のデータを得ることができ、これも有効であるとされる。夏日、真夏日、猛暑日といった日数の変化も、間接的に気温の変化を表すデータであり有効とされている。

一方、定量的な指標ではないが、初雪、初氷、雪日数といった季節現象、桜の開花、紅葉、セミの初鳴きといった生物季節の変化もヒートアイランドの影響を知る手がかりとして用いられることがある。

原因 編集

ヒートアイランド現象の原因とされるものを挙げる。どの要素がどの程度ヒートアイランドに寄与しているかは解っていない。

ヒートアイランドが進めば進むほど、冷房需要が増加し、それが排熱の増加を招いてヒートアイランドをさらに促進するという悪循環も指摘されている。

影響 編集

ヒートアイランドにより発生するさまざまな影響を以下に挙げる。

  • 恒常的な気温の上昇。寒波のリスクの減少と熱波のリスクの増加。
  • 気温の上昇による冷房や空調設備への電力需要の増加、弊害が発生。
  • 気温の上昇による光化学オキシダントの増加。
  • 気温の上昇による大気の循環の変化。集中豪雨などの局地現象の変化。
  • 気温の上昇による生物への影響。
  • 気温の上昇による水資源の需要増加、蒸発量増加による資源量減少などの影響。
  • 気温の上昇による人体への影響。熱中症の危険性増大、不快感の増大など。
  • 以上の諸影響による社会的な影響。健康被害による経済損失、電力需要増加によるエネルギー負担の増加。

なお、ヒートアイランドは海岸沿いの場合、高層ビルの直ぐ裏に位置するエリアが高温になりやすい。また、内陸の盆地内の都市は大気の循環が悪いため、特にヒートアイランドの影響を受けやすい。日本の最高気温を記録した熊谷市多治見市はその顕著な例である。

また、ヒートアイランドの深刻な大都市問題であるが、地球温暖化への影響は小さいことがわかっている(後の節を参照)。

緩和策 編集

ファイル:Shiyakusyo mae Station in Kagoshima.jpg

太陽光の吸収量を減らす、排熱を減らす、冷却効果を高めるといったことを目的に緩和策が取られている。

  • 緑化、近年は屋上の緑化・壁面の緑化(緑のカーテン)の採用も多い。東京都兵庫県においては条例によって一定の条件下で屋上の緑化が義務付けられている。また多くの都市で助成金が出る。
    • 路面電車では、軌道敷に芝生を敷き詰めるという方策を採るケースもあり、「緑化軌道」や「芝生軌道」とも呼ばれている。この方策により、軌道敷内では車道部と比較して10度以上低い温度となるという実証試験の結果が報告されている[1]
  • 高光反射率素材・塗料の採用。
  • 水辺の整備、湿地や湖沼などの保護や拡張。
  • 透水性舗装保水性舗装遮熱性舗装の採用。
  • 「風の道」の確保。水上や郊外から涼しい空気が都心に流れやすいようにする。シュトゥットガルトの事例やベルリンのポツダマープラッツ周辺再開発に伴う事例が有名。
  • 散水、打ち水
  • ドライミストなどの新たな冷却機器の設置。
  • 自動車・航空機などの輸送機器、建築物(空調・給湯)からの人工排熱の抑制、冷却。
    • 交通・輸送分野では公共交通機関への移行およびモーダルシフトなどがある。
    • 産業・家庭分野では少排熱型製品への転換、省エネルギーなどがある。
  • 根本的対策としては、郊外への人口分散による都心の過密解消。ただし、郊外に移転した人たちがより一層マイカーを使うようになっては効果は薄れる。

緑化、水辺の整備、『風の道』の確保などは、都市計画を考える際に一体的に考える必要があり、事業規模や費用も大きくなる。弊害も大きいため、なかなか実現されにくい。

また、多くの緩和策は地球温暖化の緩和策とも共通し、ヒートアイランド対策が地球温暖化対策として(逆もまた同じ)効果を発揮することもある。

地球温暖化との関係編集

ファイル:UHI profile.gif
都市の一部はその周囲より数度高温になることがあるため、都市が広がった効果が全地球的な気温の上昇と誤解されているのではないかという懸念がなされてきた。実際は、「ヒートアイランド」は重要な局所的な効果であるが、気温の記録に見られる傾向を歪めているという証拠はない。例えば、都市部と田園部の傾向は非常に似ている[2]

IPCCの第3次レポート(2001)には次のように書かれている。

しかし、ヒートアイランドの効果がもっとも顕著であるのは北半球の陸地であるが、そこでは対流圏低部の温度と地表の空気の温度の間には有意な差はない。実際、北アメリカの地表の空気は10年に0.27度で気温が上昇しているが、対流圏低部の温度の上昇はこれよりわずかに大きい10年に0.28度の速さであり、この違いは統計的に有意でない[1]

すべての都市部がその周りの田園部に比べて温暖化しているわけではないことにも注意する必要がある。例えば、ハンセンら(JGR, 2001)は、気温の記録を均一化するために、世界中の都市部にある観測所の傾向をその周りの田園部にある観測所にあわせて修正した。これらの修正のうち、42%は都市部の傾向を温暖な方に修正した。つまり、42%の観測所では、都市はその周りの田園部より暖かいのではなく、涼しいのであった。この理由のひとつは、都市部は不均一であり、また観測所は都市の中でも『クールアイランド』が起こっている場所(例えば公園)に置かれていることが多いからである。

Peterson(2003)によると、ヒートアイランドの効果は誇張されて伝わっており、この研究では「一般的に受け入れられた考えに反して、年平均の気温には、統計的に有意な都市化の効果はない」ことがわかった。この研究は人工衛星によって夜間の都市部の照明を検出し、さらにもっと詳細に時系列を均一化することによって得られた(時系列のデータは、たとえば都市部の周りの田園部の観測所の傾向を都市部に対し暖かいほうに(つまりその部分は都市部に比べて涼しかった)修正してあった)。論文が言うように、この結論が認められるなら、「部分的には都市にそのまま設置されている観測点からも寄与がある地球の平均気温の時系列データがどのようにして都市の温暖化に汚染されずにいるのか、という謎を解く」必要がある。主な結論は、微小だったり局所的だったりする影響がヒートアイランドの中程度のスケールの影響を圧倒しているということである。街の多くの場所は田園部の観測点より暖かいが、気象の観測は公園のような『クールアイランド』で行われていることが多い。

2004年11月の Nature と2006年の Journal of Climate に出版された David Parker の研究では、静かな夜に測定された気温と風のある夜に測定された気温を比較することによって、ヒートアイランドの理論を確かめようと試みた。もしヒートアイランドの理論が正しいなら、風は都市や測定機器から過剰な熱を奪うので、測定器は静かな夜のほうが風のある夜より高い温度を記録するはずである。静かな夜と風のある夜では違いはなかった。著者は次のように言う。「我々は、地球的には、陸地の気温は風のある夜と風のある夜で同じ程度に上昇してることを示した。これは観測された全体的な温暖化は都市化の結果ではないことを示している。」[2][3]

しかし、Roger A. Pielke は、Parkerの2004年の論文には「結論に深刻な問題がある」[3]と主張した。Geophysical Research Letters に出版された Pielke の研究では、「もし夜の境界層の熱の流れが時によって変わるなら、地表の層に弱い風があるときの気温の傾向は高さの関数になり、風が強いときと弱いときでは同じ気温の傾向は起こらない。」という[4]

地球温暖化の懐疑論者がしばしばとる別の見方は、陸地に置かれた温度計で見られる気温の上昇の大部分は、都市化による上昇と、都市部に配置された観測所のせいであるということである[5][6]。しかし、これらの見方は主に商業出版で提示されており、査読を受けた科学論文でこの見方をとっている論文はない[4]

IPCC第4次評価報告書(2007年、P.244)では次のように書かれている。

半球的や全球的なスケールで観測を行った研究によれば、都市に関係した気温の傾向は、気温の時系列に見られる10年程度やそれ以上の時間スケールでの傾向より小さい程度である(例えば、Jones et al., 1990 や Peterson et al., 1999)。この結果は、部分的には、データからはっきりと都市化に関係した温暖化の傾向がある少数(1%未満)の観測所を除いたことによっている。世界の約270の観測点の中で、夜の最低気温の上昇傾向は、1950年から2000年の間、もっとも大きく都市の温暖化の影響を受けやすい時間帯である風のない夜でも特に強められてはいない、ということをParker(2004, 2006)は注意した。だから、問題になっている全球的な陸地の温暖化傾向が都市化した場所の増加に大きく影響されている可能性は非常に低い(Parker, 2006)。(中略)よって、この評価では、都市の温暖化の不確実性の程度は第3次報告書と同じように計上する。すなわち、1990年から陸上では10年に0.006度であり、海洋ではヒートアイランドはゼロなので、全体では10年に0.002度である。

参考資料編集

  1. grida.no
  2. Parker, David E.(2004), “Large-scale warming is not urban”, Nature 432 (7015): 290-290, doi:10.1038/432290a, http://www.cru.uea.ac.uk/cru/projects/soap/pubs/papers/jones_Nature2004.pdf 2007年8月2日閲覧。 
  3. Black, Richard (2004年11月18日). Climate change sceptics 'wrong'. BBC News. 2007年8月2日閲覧。
  4. Sandalow, David B. (2005-01-28). Michael Crichton and Global Warming. Brookings Institution. 2007年7月6日閲覧。

関連項目編集

外部リンク 編集

ca:Microclima urbà

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