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地磁気(ちじき)は、地球が持つ磁気及びそれにより地球上に生じる磁場の総称。 ベクトル量であり、大きさと方向を持つ。大きさの単位には通常「nT(ナノテスラ)」が用いられる。

特徴編集

地球の磁場は、概ね磁気双極子で近似でき(つまり、地球の中心に仮想的に置かれた一つの小さな強い棒磁石だけによって作られていると見なせる)、現在は北極部にS極、南極部にN極に相当する磁極がある。地球の双極子磁場は自転軸に対して約 10.2 度(2006年)傾いているため、地理上の極と磁極の位置にはずれがある。

地磁気のベクトルは、赤道付近を除けば、地面に対して平行ではなく、地面と斜めに交わるかたちになっている。ある地点において水平面と地磁気のベクトルとがなす角を伏角といい、地磁気が地面に向かって突き刺さる方向の場合がプラス、地面から出て行く向きの場合がマイナスとなるように定義される。伏角は、南半球のほとんどでマイナスで、南の磁極に近づくにしたがって -90 度に近づく。また、北半球のほとんどでプラスとなり、北の磁極に近づくにしたがって +90 度に近づく。ただし、地球磁場は双極子磁場とは完全には一致しないため、伏角が -90 度あるいは +90 度になる点は、地球双極子磁場の極とは一致しない。

一方、地磁気のベクトルを水平面に投影したときに、地理上の真北となす角は偏角と呼ばれる。偏角が現れるもっとも大きい要因は、地球の双極子磁場が自転軸に対して傾いていることである。しかし、やはり地球磁場が双極子磁場と完全には一致していないことから、偏角も双極子磁場の極の方向とは一致せず、伏角 +90 度の点の方向にもならない。例えば日本の場合、双極子の北極は、日本から見ると地理上の北極より少し東の方向になるが、偏角はやや西を向いている。

発生原因編集

地表で観測される磁場は、その大部分が、地球のコアに流れる電流に起因する。コアは金属鉄を主成分としており、電気伝導度が比較的高い。コアに一様に電流が流れると仮定すると、地磁気の双極子モーメントから予想される電流の強さは数 10億 アンペアにも達する。ただしコアは半径が 3,500 キロメートル弱と、地球半径の半分以上も占めており、きわめて巨大であるため、電流密度にすれば 1 平方メートルあたり数ミリアンペア程度である。

その他の原因としては、地殻磁化していること、電離層に流れる電流、地殻やマントル、海水などに流れる電流、などがあげられるが、これらの寄与は一般には小さい。なお地球の深部は高温のため、鉄を含め、多くの強磁性鉱物はキュリー点を超えてしまい磁化を失う。したがって強く磁化しているのは地球のごく表層だけである。地球は大きな電磁石であるといえる。

強さ編集

地磁気の強さは場所によって異なり、磁力は 24,000 - 66,000 nT(0.24 - 0.66 ガウス)。赤道では弱く、高緯度地域では強い。東京付近は約45,000nTである[1]

変動編集

地磁気は、常に一定ではなく、絶え間なく変化している。磁気嵐や、激しいオーロラが発生したときには、数秒から数日のスケールで激しく変化する。このような現象は、太陽風と関係がある。

磁気嵐やオーロラがない場合でも、一日周期で数 10 nT 程度の変化が見られる。このような一日周期の変化を「日変化」と呼ぶ。日変化は太陽放射と関係がある。

以上は、地球外部の要因による変化であるが、地球の発生する磁場そのものがさまざまな時間スケールで変化していることも知られている。このうちもっとも劇的な変動は地磁気の逆転であろう。これは地磁気極の N 極と S 極が反転する現象で、古い火山岩などがもつ磁化を測定することで、過去の地磁気の様子を推定するという古地磁気学によって明らかにされた。地磁気は平均すると 100 万年に 1.5 回の割合で逆転を繰り返しているが、その割合はかなり不規則である。たとえば白亜紀には1千万年以上にわたり逆転のない期間があったと推定されている。

逆転よりももう少し変動の振幅が小さい、数年から数千年程度の時間スケールの磁場変動のことを「永年変化」と呼ぶ。地磁気は年々弱くなっており、ここ 100 年では約 6% 弱くなった。これはあと 1,000 年足らずで地磁気が消滅してしまうほどの減少率であるが、この程度の磁場変動は過去においてもそれほど珍しいものではない。

ダイナモ作用編集

詳細は「ダイナモ理論」を参照

コアに流れる電流は、エネルギーの入力が何もなければ、電気抵抗のために減衰し、10 万年程度で消えうせてしまう。コアの電流を維持するしくみを、地球のダイナモ作用という。

地磁気を維持している根本の原因のひとつは、コアの冷却である。地球が誕生したときには、コアは溶融しており、液体の状態にあったと考えられる。現在も、地震波の伝わり方の特徴から、コアの大部分は液体状態のままであることがわかっている(一部固化して内核を形成している)。コアの表面の温度が下がると、熱収縮により密度が上昇し、コアの内部に沈み込もうとする。一方内部の熱い液体は上昇し、熱をマントルに捨てる。これがコアの熱対流運動である。

熱対流によって生じる運動エネルギーは、通常の発電機(ダイナモ)と同様、電磁誘導の原理によって、電磁気的なエネルギーに変換される。その過程は次のようにまとめられる。

  1. コアに初期電流が流れる。
  2. 電流は周囲に磁場をつくる。
  3. その磁場中で、液体鉄が熱対流運動し、誘導起電力を生じしめる。
  4. その起電力により、電流が流れる。

4の電流が初期電流を強めるならば、電流は指数関数的に増大する。ただし磁場中を電流が流れるとローレンツ力が発生し、それは熱対流を妨げる向きにはたらくので、電流と流速とは適当なバランスのもと、ある大きさに保たれる。

通常の発電機では、永久磁石がつくる静磁場をもとにして起電力を得ている。しかしコアの場合、自分自身に流れる電流のつくる磁場を用いて誘導起電力を得ている点が、きわめて特殊である。このような発電のしくみを自励ダイナモという。コアのダイナモ作用は熱力学および電磁流体力学によっておおむね記述できる。しかしこれは非線形過程であり、数学的に解析するのは容易ではない。そこで計算機をもちいた数値シミュレーションが1980年代から行われるようになった。とくに1990年代後半に至って、地球に近い環境下で、自発的に磁場が生成されうることが確認された。生成される磁場が自転軸に沿った双極子磁場で表されることや、逆転を含めた時間変動の特徴なども再現されている。

利用編集

地磁気の利用は古くから行われており、方位磁針を用いて方位を知るために用いられてきた(この場合得られるのは磁気方位であり、地理上の方位を得るためには磁気偏角で補正しなければならない)。また、伏角を利用して姿勢計測・制御を行うようなシステムも存在する。また、地磁気を利用したモーションコントロールセンサーも携帯電話等に実装例がある。渡り鳥や回遊性の海生動物の中には地磁気を方位を知る手段として利用しているものがある。

脚注 編集

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  1. ハイテク兵器の物理学 (財)防衛技術協会編 ISBN4-526-05644-8

関連項目編集

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外部リンク編集

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