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太陽嵐(たいようあらし, 英:Solar storm)とは、太陽で非常に大規模な太陽フレアが発生した際、爆発的に放出される太陽風電磁波粒子粒子線などが、地球上に甚大な被害をもたらす現象である。

概要[]

太陽は、太陽黒点数の変化周期である約11年のほか、約200~300年などのいくつかの活動周期を持つと言われている。最も顕著なのは11年周期であり、およそ11年ごとに、活動が活発な極大期とそうでない極小期とを繰り返す。

極大期には、人工衛星に搭載される電子機器などに被害をもたらすような強い太陽フレアが発生することがある。また、強い磁場、高密度のプラズマを伴った太陽風が磁気圏に衝突することで、強い電気エネルギーが磁気圏内に生成され、それが原因となって地上にも被害をもたらすことがある。歴史上最も激しい太陽フレアは2003年11月4日のもので、人工衛星や惑星探査機に影響が及び、国際宇宙ステーションでも念のため避難が行われた。しかし、被害は限定的で一時的なものであった。

この史上最大の太陽フレアはX28(フレア参照)であったが、これをはるかに凌ぐ規模の太陽フレアが発生する可能性が指摘されている。とくに、人工衛星や電子機器の普及が進み、太陽活動に関する研究が発展した近年、この太陽フレアによって地上に大きな影響がもたらされることも考えられるようになり、「太陽嵐」と呼ばれている。

太陽嵐による影響と対策[]

太陽嵐により磁気圏内に生成された電気エネルギーは、電離層に強い電流を流し、それによって激しい地磁気変動が発生する。さらにそれによる誘導電流が送電線に生成されると、この誘導電流が正弦波交流電流を乱し、電力関係の機器が壊れたり、発電所変電所などの電力施設が破壊されて停電になるなど、大規模な被害が発生する。

太陽嵐により放出される電磁波などは、その速度の違いによって、3段階に渡って別々に到達する。まず、最初に到達するのが電磁波で、これは光速度で伝わるためわずか8分程度で到達する。これは主に電波障害を起こし、多くの通信システム(人工衛星飛行機の無線など)が使用できなくなってしまう。

次に来るのが放射線で、これは数時間で到達する。宇宙飛行士などは放射線を遮蔽できるような施設内に避難しないと被曝してしまう。

最後に来るのがCME(コロナガス噴出、コロナ質量放出)と呼ばれるもので、2~3日後に到達する。この影響が最も危険であり、これに伴って磁気圏内に生成される電気エネルギーが原因となって発生した誘導電流が送電線に混入すると電流が乱れ、停電、電力システムの破壊を招く。これを防止するには、発電所などを停止して送電をストップし、強制停電を行うことが必要になると考えられている。大都市を中心に世界的に電力供給に影響が出ることが見込まれ、復旧に莫大な資金がかかり、経済的な損失を招くことになる。

はじめの電磁波到達を乗り切れれば、本体の太陽風の到達までに情報を発信して必要な措置を取ることができるため、主な対策として人工衛星による常時監視が挙げられる。これを担当している衛星として、NASAの「先進成分探査機(ACE)」がある。この衛星は地球と太陽のラグランジュ点付近で太陽嵐の常時監視をしており、太陽嵐の到達1時間前に太陽嵐を感知することが出来る。

過去の太陽嵐[]

過去に発生したと推定されている太陽嵐は以下のとおり。

  • 1805年
  • 1859年
    • 非常に激しいCMEが発生、18時間足らずで地球に到達し現在でも史上最大とされる規模の磁気嵐を発生させた。まだ普及途中であった電信機器は回路がショートし火災が発生した。
  • 1958年
    • 激しい太陽フレアとCMEが発生。アラスカのフェアバンクスでは非常に明るいオーロラが観測され、メキシコでも3度に渡ってオーロラが観測された。

今後発生すると予想されている太陽嵐[]

地球上の海水が熱塩循環という大循環をしているように、太陽内部でも、磁気を帯びたガスがベルトコンベアーのように循環をしていると考えられている。この循環は40年程度で一回りするが、これが約30年~50年程度と変わり、速くなったり遅くなったりする場合がある。速くなっている場合は、多くの磁力線が閉じてエネルギーが蓄積されていることを意味し、近い将来磁力線が開いてエネルギーを開放する可能性が高いと考えられている。この開放は、11年周期の太陽活動のうち、太陽磁場が反転して磁力線が大きく動く極大期に起こる。

近年循環が早かったのは1986年~1996年であり、2000年の極大期には開放されなかったため、次の極大期である2010年2011年ごろに開放され、その際には太陽嵐が発生する可能性があると考えられている。前回の1958年や1859年などと比べても、人工衛星が格段に増え、電気が生活を支え、電気製品電子機器があらゆるところに利用されている現在、あらゆるところに影響が及ぶ可能性があるとされている。

出典[]

関連項目[]

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