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避難場所の案内図

本項では、日本における地震震災)への対策とその体制について記述する。地震による災害とその被害は、典型的な自然災害に分類され、対策を通じて被害を軽減する取り組みが古くより行われてきた。現存する耐震性の高い建築物・構造物がその時代の耐震技術を伝えている。一方、地震の前触れや地震・津波への備えを謳った伝承・口承も残されてきた。しかし、19世紀から20世紀にかけての工業化、生活様式の変化、科学の発展といった様々な変化により、地震の被害やその対策は大きく様変わりした。地震に強く復興が早いインフラ(生活基盤)の整備が求められるようになり、建物の耐震性能が法的に義務付けられ、地震被害の多い地域では耐震化などの対策が進む一方、人口・政治経済が集中する都市での地震対策が重要な課題となった。一方、大規模な地震被害が発生するたびに、行政の対応、避難者の生活、復興支援など、次々と課題が生まれてきている。

日本付近では4つのプレートが衝突し、約2,000以上の活断層が有ると言われており、調査が進むにつれて年々その位置は変わり、数は増えている。どこで地震が発生して被害が出てもおかしくない。軽微なものを含めると、およそ5分に1回のペースで地震が発生している計算になるという(東京大学地震研究所)。地震が少ない国に比べて、個人にとっても社会にとっても、日本は地震被害による政治経済社会的なリスクが非常に高い国である(報道などにおいては「地震大国」なる異名が冠せられることも少なくない)。そのため、個人集団がともに地震の被害を抑えるための対策をとることが必要である。

本項目では、個人や家庭が生活していく上での対策、地域や防災組織が行う対策、企業や法人が経営を行っていく上での対策、国や行政が行う対策の4つに分けて説明する。

退避行動[]

文部科学省は2010年に国として初めて、退避行動の指針を示した[1][2][3]

推奨
  • 外に出ない
    • 地震が起こった直後の行動として、周囲に構造物が少ない開けた場所ではその場にうずくまることが奨められるが、建物・電柱・樹木などの構造物や斜面の近くでは、倒壊してくる物や飛散物を避けられる建物内の方が安全とされる。
  • 頭を保護する
    • 屋内においても屋外においても、飛散物等を避けるために、(動ければ安全な場所に移動し、動けなければその場で、)手の届くところに本やクッションなどがあればそれを使い、なければ手で覆うなどして、頭を保護するのが安全性は高いと考えられる。
場合により推奨
  • タンスにつかまる・机の下に隠れる
    • これらは、自分から近い場所にタンスや机などがある場合、また揺れが比較的小さく行動がしやすい場合に推奨される。遠い場合、揺れが大きい場合は危険性が増すのであえて行うべきではないと考えられる。
非推奨
  • 火を消す
    • 1990年代まで、「地震が起きたらまず火を消せ」という呼びかけが盛んに行われていたが、近年はこれが奨められなくなっている。これは、多くの都市ガスLPガス事業者で、一定以上の揺れを検知すると自動でガスを遮断するマイコン内蔵のメーターが普及し、「地震発生時に火を消す」という行動がむしろ危険になったためである。
  • 非常口の確保
    • 大きな地震により建物に歪みが生じ、戸や窓などが歪んで開かなくなって脱出困難になることを防ぐため、避難口の確保を優先せよという呼びかけも盛んに行われていた。ただ、過去事例の研究により、自分から遠い場所の避難口をあえて確保しようとする行動をとることで、危険性が高まる場合があることも分かっている。
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個人・家庭[]

個人が所有する住宅やその周辺では、個人による対策が必要不可欠となる。また、学校や職場、外出先などでも、一人ひとりが対策行動を行うことが、自身の安全を守ること、ひいては全体の被害抑制につながる。

住宅[]

阪神・淡路大震災では、死者6,000人のうち、約5,000人が木造住宅の倒壊によって圧死(その多くが即死)したとされる。したがって、住まい選びの段階では、出来るだけ新しい建築基準法に沿った、耐震性の高い住宅に住むことが望ましい。特に、土台と連結していない古い木造住宅、重い屋根は地震の時圧死の危険があるといわれる。

対策としては、柱を土台とボルトなどで連結することや、骨組みへの筋交いの追加などの補強、瓦屋根よりも軽量な新建材にすることが有効といわれる。

一方、今住んでいる家でできる対策は、補強などの事後措置に限られてくる。既設の住宅については、耐震診断補強のための費用の一部が、自治体から補助される場合があるので、自治体に確認すると良い。

建物が地震に耐えられても、タンスなど室内の家具が転倒することがある。家具の転倒を防止するために、天井と家具の上部に渡すつっかえ棒や、家具自体をにL字金具で固定してしまう方法がある。

職場・学校・外出先[]

避難場所としては、市町村で公園学校などが指定されており、各自治体から公開されている。しかし、市町村の公務員が全市民の住宅からの避難経路を全て把握している訳ではないので、すべての住宅に関して避難に適切な場所を選んでいるとは考えにくく、本当に自分の住宅から避難する場合に適切な場所かどうか、実際に歩いて確認をする必要がある。

多くの場合、学校、新築のマンション、新築の住宅等が近くにあれば安全に避難が出来る。学校に避難する場合は運動場などの屋外の広場か、体育館等に避難することになる。ただ、2000年代の地震の被害報告で体育館や室内プール・ホールなどの大型建築物の釣り天井の落下が目立っており、一部の施設では落下の可能性も考えられると指摘されている。国土交通省は2005年に公共建築工事標準仕様書等を改定、500m2以上の同種施設において管理者に実態調査を要請するなどしているが、問題があると診断された国内約4,900施設のうち対策を行ったのは2割弱(2009年3月時点)と報道されている[4][5]

職場や学校など、日常において頻繁に通う場所では、その場所での対策を考えたり、通勤通学・帰宅時の対策を考えるとよい。学校や一部の職場では避難訓練が実施される(地震を想定する例は少ない)が、これを通して避難経路の確認をするとよい。

一方、外出先での対策を個人で行うのは難しいため、商業施設や公共施設では、災害時の避難を容易にする法的基準が定められている。消防法によって、商業施設や宿泊施設などでは誘導灯の設置が義務付けられており、地震に伴う火災・停電時はもとより、明るい時でも、避難経路を確認する手段として有効である。また、同法によって、宿泊施設の各部屋や公共施設の見やすい場所に避難経路図を設置することも定められている。

地域組織[]

地域によっては自主防災組織が組織され、地震対策を主導・サポートしている場合がある。家庭レベルでは、これに参加したり、支援を受けたりすることができる。また、町内会や学校等と連携して地震対策を行う例もある。

企業[]

一般的に企業では、社員の安全確保はもとより、業務遂行や生産継続などの観点から、地震の被害を受けてからその被害を一刻も早く復旧することが求められる。経営視点では、事業継続マネジメント(BCM)を通じて事業継続計画(BCP)を作成し、これに沿って対策を行うのが一般的である。一定規模以上の事業所は自衛消防組織の設置が義務付けられており、地震の際の自衛防災組織の活動を計画しておくことも求められる。

また、大地震により物資が不足した際には廉価あるいは無料でその物資を提供したり、寄付ボランティア活動を行うなどの、社会貢献面での対応も必要である。

国・自治体・公的機関[]

自治体の対策[]

地震による被害が発生した場合、救助・救急や火災の消火活動を行うのは主に市町村の消防本部消防団である。自治体による地震対策の1つとして、消防本部や消防団における、地震時の対応を想定した装備・設備の改良や訓練等が挙げられる。装備改良や訓練などは一般的に過去の事例を踏まえて行われるものであり、地震被害を経験した地域の消防からノウハウを提供してもらう必要がある。また、消防により定期的に行われている広報活動を通じて、地震への対策を市民に呼び掛ける手法も多用される。

他方で、自治体による防災活動の一環として、例えば耐震性の低い建物・構造物の調査・補修など、地震災害の危険箇所を調査してその対策を講じることも求められる。また、耐震性や危険箇所の情報公開を行うなどの対策も必要とされている。

一次避難場所広域避難場所避難所等の設定を行うのも自治体であり、その責任を負っている。また、それに関連して防災倉庫等を設置することも求められる。

国家的対策[]

国の機関(国立大学を含む)による地震対策を見てみると、日本には地震に関する組織が比較的多い。ただし、業務が重複している部分も見受けられており、研究者の間でもこれらの組織の役割の違いを明確に説明することは難しいとされている[要出典]アメリカ合衆国アメリカ地質調査所(USGS)は下に掲げているような役割をほぼ一元的に担っている[要出典]

地震予知総合研究振興会
地震予知と防災に関する研究を目的として、1981年1月22日に設立された財団法人。下部組織に地震防災評価機構地震調査研究センター東濃地震科学研究所がある。
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地震調査研究推進本部
1995年の阪神・淡路大震災から、1995年7月に制定された地震防災対策特別措置法に基づいて設置された組織である(略称「推本」)。
地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策を立案することなどを目的としている(同法第7条第2項)。発足当時は、総理府に設置されていたが、中央省庁再編によって文部科学省へ移管された。本部長は文部科学大臣である。本部の下に政策委員会地震調査委員会(2007年現在の委員長は阿部勝征地震調査研究センター所長)が設置されている。
政策委員会は関係各省庁の局長級幹部、地方自治体の長、学識経験者によって構成されており、各省庁の地震に関する研究及び調査観測計画の調整、予算配分の方針、調査の成果を社会に広報するための方針など審議している。定められた観測計画に基づき、強震計高感度地震計GPS連続観測点が全国に各1000点ずつ整備された。この観測体制は世界随一である。また、地方自治体に交付金を配分し、活断層や地下構造の調査をさせている。
地震調査委員会では国立大学法人独立行政法人などの研究者が毎月集まり、国内の地震活動の状況について検討し、評価文を毎回公表している。大地震が発生した場合には一両日中に臨時会が招集され、検討が行われる。また、地震調査委員会の下に設置される長期評価部会では、全国の98の主要活断層や主な海溝型地震についてその危険性を検討し、発生確率や規模などを公表している。同じく強震動評価部会では、長期評価部会での評価に基づき、それらの地震が実際に発生した場合の揺れの大きさをコンピュータシミュレーションによって試算した地震動予測地図を作成する作業を進めている。2005年3月末には全国を概観した地震動予測地図の第一版が完成し、各地域で将来見舞われる地震動の大きさが把握できるようになった。これは「地震ハザードステーション」でも公開されている。
中央防災会議
災害対策基本法に基づいて設置された内閣総理大臣を長とする機関であり、事務局は内閣府である。
会議は内閣総理大臣、全ての閣僚、指定公共機関の長4名(2007年現在は日本銀行総裁、日本赤十字社社長、NHK会長、NTT社長)及び学識経験者4名(2007年現在は阿部勝征地震調査研究センター所長、重川希志依富士常葉大学教授、石川嘉延静岡県知事、秋本敏文日本消防協会理事長)によって構成されている。国の防災基本計画の策定や重要施策の決定、大規模地震対策特別措置法に基づく東海地震地震防災対策強化地域の指定(2002年4月見直し)、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく地震防災対策推進地域の指定(2003年12月)などを行っている。地震のほかにも火山災害や風水害などの政策も担っている。
気象庁
気象業務法に基づいて地震観測を行って、マグニチュード震度などの地震情報を発表している。
また、東海地震予知のための地震防災対策強化地域判定会(通称判定会)を設置しており、気象庁が行っている前兆現象の観測結果から東海地震の発生が予知された場合には内閣に報告し、内閣総理大臣が警戒宣言を発令する。判定会の会長は2008年4月現在阿部勝征東京大学名誉教授である。1996年~2008年3月までは溝上恵東京大学名誉教授が就いていた。
地震予知連絡会
国土交通省国土地理院に設置されている。地震予知に関する観測データや研究成果などの情報交換のために設置されている。法律で設置されているわけではなく、研究者間の情報交換が主な目的であり、何か政策を決定するという類の会議ではない。通常は3ヶ月に1回開催される。
国立大学法人北海道大学東北大学東京大学東京工業大学名古屋大学京都大学九州大学、独立行政法人防災科学技術研究所、独立行政法人海洋研究開発機構、独立行政法人産業技術総合研究所海上保安庁気象庁国土地理院から選出された30人の委員及び若干名の臨時委員と名誉委員から構成される。委員の交代はあるが、構成機関は当該機関の組織改編などを除けば変わることはほとんどないといってよい。2007年現在の会長は、大竹政和東北大学名誉教授(在任2001年4月~)である。歴代会長は萩原尊禮(在任1969年4月~1981年3月)、浅田敏(在任1981年4月~1991年3月)、茂木清夫(在任1991年4月~2001年3月)と、その時代の地震予知研究の代表的な地震学者が会長に就任している。
地震予知研究協議会
東京大学地震研究所に1978年に設置された機関である。東京大学の機関であるが、「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」という建議に基づき、各国立大学で行われている地震予知研究の方針、観測計画や予算に関する調整を大学間で行っている。大地震発生時の緊急対応のほか、政府と大学の間の窓口としての役割も担っている。2007年現在、国内の各地域を分担するように、北海道大学弘前大学東北大学東京大学名古屋大学京都大学高知大学九州大学鹿児島大学によって運営されている。

地震が発生した場合、その情報を早く的確に伝えることが、被災地における混乱の防止、救助・支援の促進などにつながる。NHKでは、本震の最大震度が6弱以上の揺れを観測する地震の発生や、津波警報が発表された場合、国際放送(NHKワールド)を含むテレビラジオのすべての番組を中断して、地震や津波の情報を伝えている(8波全中)。テレビでの地震情報は総合テレビ、衛星放送全チャンネル(衛星放送は震度3以上のみ)でテロップ表示を行う(教育テレビでも稀に表示されるが、NHKワールドでは一切表示していない)。ラジオではラジオ第1放送で該当地域のみ番組を中断し放送される(FM放送ラジオ深夜便の放送時のみに限られる)。FM放送は日中の放送では地震情報は放送されないが、津波が発生する可能性がある地震に限り番組を中断して放送される。NHKワールド・ラジオ日本については全国一斉に流れる場合に限りそのまま放送される。

NHK以外の民間放送でも、概ね震度3以上の地震発生時、あるいは津波情報発表時にはテロップ表示を行っている。NHKが番組を中断して情報を伝えているのに対し、民間放送は発生直後に番組を中断することは少ない。これは、NHKが視聴者からの受信料主体の収入に対し、民間放送はコマーシャル収入が主体で、スポンサー間との調整が難しいためとされている。だが、二次災害など地震の被害の影響が高い場合は、NHKに遅れながらも番組を中断して情報を伝えている事が多い(この場合は当初予定していたコマーシャルは放送せず、ACジャパンのコマーシャルを放送している)。特に、テレビ朝日では被害が拡大した場合、報道ステーションを午後9時からに前倒しして放送することもある。一方、テレビ東京では、番組を中断して情報を伝えることは極めて少ない(テロップ表示は行っている)。これは、人材不足や系列局が少ない事が要因とされている。

このほか、コンピュータで地震や津波の情報を配信・共有するP2P地震情報などのソフトウェアや、同報系市町村防災行政無線により、屋外スピーカーで津波情報や地震に対する警戒を広域に呼びかける手法、感震計により強い揺れを観測した際に警告を発する手法もある。また、NHKなどでは津波警報発表時や東海地震警戒宣言発表時に緊急警報放送を行っている。

地震の揺れが到達する前の対策として、日本においては現在、一部の鉄道ユレダスが運用されている。また、これまでも一部で運用されてきたが、2007年10月からは一般に向けた緊急地震速報の運用が開始された。

大地震による災害時には、電話など通信の混雑への対策として災害用伝言ダイヤルが設置されるなどしている。携帯電話PHSにおいても災害用伝言板サービス等の同様のウェブ上サービスがある。また、自治体や民間が協力して臨時災害放送局を設置し、被災者への情報提供が行われた例もある。

脚注[]

  1. 2009年6月13日付読売新聞
  2. それ以前は自治体などが注意を喚起していたが、科学的な検証に基づくものはなかった。
  3. 地震防災研究を踏まえた 退避行動等に関する作業部会 報告書 (案) 文部科学省、2010年5月25日。
  4. 体育館・劇場など大型施設、天井の耐震化進まず、国の基準も不明確。 2009年11月10日、日本経済新聞 夕刊(Shopbiz)。
  5. 地震被害と天井の対策 高山正春、大成建設(株)。

外部リンク[]

地震(日本語)

防災

関連項目[]

ウィキブックス
ウィキブックス個人での地震対策関連の教科書や解説書があります。
  • 日本の地理
  • 日本の政治
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