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ファイル:Kuril Benioff zone.JPG

深発地震(しんぱつじしん)とは、地下深いところで発生する地震のことである。深発地震は原則として、深く潜り込むプレート(スラブ)内部の性質変化に起因するスラブ内地震である。

定義 編集

深発地震は震源の深さが深い地震であるが、明確な定義はない。だいたい深さ60kmまでの地震を浅発地震、60kmから200kmまでの地震を稍深発地震、200km以深で発生する地震を深発地震という[1]。深さ500~670kmで発生することが多い。ただし深発地震は670km[2]以深では発生しない。

メカニズム 編集

深発地震はプレート沈み込み帯の地下深くで発生し、それ以外の場所では海嶺下やホットスポット周辺も含めてまったく発生しない。そのため、世界で深発地震が発生する場所は限られている。

地下において深発地震が発生する地帯は、緩やかなカーブを描いた面状に分布している。これを深発地震面という。深発地震面は、断面図上に震源分布をプロットしていくと現れる。これを1927年に初めて発見したのが和達清夫であった。1930年代には日本の地震学研究者の間では広く認知されていた。一方、欧米では同時期にソ連のヒューゴー・ベニオフが観測結果から深発地震の存在を予見しており、1950年代に研究成果を挙げて学界でも広く認められた。当時は地震は深くても数十kmほどまでの浅いところでしか発生しないと考えられており、この発見が地震研究にも大きな影響を与えた。この功績から、欧米では深発地震面を「ベニオフ帯(Benioff Zone)」と呼ぶようになった。日本でもこの呼び方が導入されたが、和達の功績を考えて「和達-ベニオフ帯」と呼んでいる。

深発地震の存在が定説となった1930年代には、諸説あったものの、地上の地震が地殻のごく表面で起こるのに対して、地下にはスラブという固い岩盤が存在し、そこで断層運動が発生しているのではないかと考えられた(スラブ内地震)。また、地下300km付近に深発地震の少ない地帯が存在することから、その上下を「稍深発」と「深発」に区分するようになった。

1960年代に支持されるようになったプレートテクトニクスでは、プレートが海溝に沈み込んだ後の様子を示す1つの証拠として深発地震面が用いられた。この理論によりプレートの運動が深発地震と結び付けられたことで、深発地震のメカニズムに関して新たな考察がなされた。

主なものとして、古いプレートのスラブは新しいものより温度が低いことが知られているが、この冷たく剛性の高いスラブが沈み込むことで深発地震が発生するという説が唱えられたが、スラブの性質変化と矛盾する部分があり、さらに温度変化との対応にも疑問が投げかけられたことから否定されている。ただし、この研究によって、深発地震面の下や隙間にも、深発地震を起こさないスラブが分布していることが分かった。

現在は、以下のような説が支持されている。プレートの収束型境界で一方のプレートが沈み込むと、周囲のマントルに比べて低い温度を保ち剛体としての性質をもったまま深さ670kmまで沈み込む。しかしそこは遷移層下部マントルの境界であり[3]、これ以深では周囲のマントル密度が急激に増加するため、プレートがそれ以深に沈むことが難しくなり、スタグナントスラブが形成され、プレートが反ることになる。このためプレートに応力が加わり、プレートがそれに耐えられなくなったときに地震が発生する。

プレートの重みでプレートが引きちぎられるような力が加わると正断層地震に、スタグナントスラブにプレートが押し付けられるような力が加わると逆断層地震になる。深さ670km付近では後者が、それより浅い場所(200~500km程度)では前者が多い。

丸山茂徳らは、オリビンスピネル相転移する際に、岩石の弱い部分に変形が集中し発生すると主張している。ただし深発地震の震源は深さ500~670kmに広く分布する一方で、オリビンからスピネルへの相転移は深さ650~670kmでしか起こらず、この説は疑問視されている。[4]

このほかに、結晶質が非晶質化(アモルファス化)することが原因とする説、間隙水圧の上昇により脱水反応が起きてスラブの摩擦強度が低下すること(脱水不安定、脱水脆性化)が原因とする説が有力である。

このように複数の説がある背景には、沈み込み帯の深発地震面にもさまざまなタイプがあり、タイプによっては説明できない場合が生じるためである。

深発地震面の種類 編集

二重深発地震面

東北日本(東日本)の太平洋側で顕著。北海道千島列島南部でもみられる。日本海溝と、千島海溝南部に当たる。深発地震面に上面と下面があり、数十kmの間をとってほぼ平行に並んでいる。上面では圧縮力が、下面では引っ張りの力が、それぞれ沈み込み方向と並行に存在して地震を発生させていると考えられている。斜めに沈み込んでいて、スタグナントスラブに対応する最深部の反り返りもよくわかる。ただし、東北日本では上面が更に2層に分かれており、上層で正断層型の地震が多発していることも分かっている。

断裂した深発地震面

ニューヘブリディーズ海溝ペルー・チリ海溝で見られる。地表~300km付近までに深発地震面があるが、それ以深では無くなり、600km付近で再び現れる。スラブが断裂して存在するため、あるいはスラブはつながっているものの途中の部分で地震を発生させない何らかの原因があるため、と考えられている。なお、ペルー・チリ海溝では、上の深発地震面では引っ張りの力、下の深発地震面では圧縮力が働いている。

垂直な深発地震面

マリアナ海溝では、深発地震面が地下約100km以深で垂直になり、ほぼまっすぐ地球の中心へと伸びている。

短い深発地震面

アリューシャン海溝では、地下200~300km付近までしか深発地震面が存在しない。

また、西南日本に当たる南海トラフでも深発地震面は約100kmまでしか存在しない。これは沈み込むフィリピン海プレートが(沈み込み始めてから)若いことが関係している。

特徴 編集

深さ600kmで発生した場合、陸上観測点との距離は最低でも600kmあり、ある程度規模の大きな地震でなければ捉えられない。そのため、ふつう深発地震といえば比較的大規模なもの(マグニチュード6以上)を指す場合が多い。近年では地震計の性能向上などにより、小規模な深発地震も観測されている。

地震波は剛体であるプレート上を伝わりやすく、マントル中はやや伝わりにくい。そのため深発地震の震源からは、地震波は沈み込んでいるプレートに沿って斜め上方に伝わり、震源直上(震央)よりも、震央から離れた場所で大きな揺れとなる場合が多い。たとえば日本海ロシア沿海州の直下で発生した深発地震で、日本の東北地方太平洋側で有感となり、日本海側やロシアでは無感となる例が多数ある(異常震域)。

また、深発地震の地震波はすぐにマントル中を伝播する。マントルの地震波速度は大きく[5]比較的早く遠方に到達する。

深発地震は、P波が一度地表面で反射して伝わるpP波が明瞭である。P波とpP波の到達時間差から、震源の深さを概算することができる。

深発地震の例 編集

おおむねアメリカ地質調査所の記録によった。Mwはモーメントマグニチュード、mBは実体波マグニチュードである。

浅発と深発に地震にまたがる地震 編集

震源域が、浅発地震と深発地震の2領域にまたがる地震も存在する。

脚注 編集

  1. 稍深発地震と深発地震の境界を300kmとする研究者も多い。菊地正幸(2003年)『リアルタイム地震学』、東京大学出版会、p.160、ISBN 4-13-060743-X
  2. 660kmまたは690kmとする研究者も多い。以下の670kmとの記述箇所でも同様。
  3. 2000年代の今日、この呼称はあまり用いられない。ただし670kmの深さに境界があることは広く認められている。
  4. 熊澤峰夫丸山茂徳(2002)『プルームテクトニクスと全地球史解読』、岩波書店、pp.207-8、ISBN 4-00-005945-9
  5. Dziewonski & Anderson(1981)によれば、深さ600kmでのP波速度は秒速10kmである。これは地殻中のそれのおよそ2倍弱である。

出典 編集

関連項目 編集

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